ブランディング という言葉は、現代においてマーケティングのみならず、個人のキャリアやビジネスにも広く適用されるようになりました。しかし、その解釈は千差万別であり、「目立つこと」や「独自性を演出すること」を重視する風潮が見受けられます。

特に、芸能人やエンターテイメント業界におけるブランディングと、ビジネスパーソンのパーソナルブランディングを混同してしまうと、本質を見誤ることになります。

本稿では、「創られたキャラクター」としての芸能人のブランディングと、ビジネスパーソンに求められるパーソナルブランディングの違い について考察します。
ブランディングとは、単なるマーケティングツールではなく、「選ばれるための構造をつくること」 です。

芸能人のブランディング：「演出」としての戦略

エンターテイメント業界では、「個性の演出」 が極めて重要な要素となります。
芸能人は、音楽、映画、テレビといったメディアを通じて、不特定多数の大衆に消費される存在であり、そのために「目立つこと」が必須の要素となります。

レディー・ガガのケース

レディー・ガガは、その実力のみならず、奇抜なファッションや強烈なメッセージ性をもつパフォーマンス によって一躍トップアーティストとなりました。
しかし、彼女よりも技術的に優れた歌手は無数に存在します。
では、なぜ彼女が世界的な成功を収めたのでしょうか？

その答えは、「認知の構造」 にあります。
彼女は、まず圧倒的な個性を打ち出し、大衆の記憶に刻まれることを優先しました。
そして、ブランドの確立後、ジャズやクラシックといった「本来の音楽的ルーツ」に回帰することで、ファン層を拡大し、ブランドを深化させています。

篠原ともえのケース

日本においても、類似の例として篠原ともえが挙げられます。
彼女は、1990年代に「シノラーブーム」として奇抜なファッションとキャラクター性で注目を集めましたが、その後、表舞台から姿を消しました。
しかし、現在はデザイナーやアートディレクターとして再評価され、
「一過性のキャラクター」から「実力のあるクリエイター」へとブランドを変容させることに成功しています。

芸能人のブランディングの特性

このように、芸能人のブランディングには以下の特徴があります。
✔ 第一段階：認知を獲得するためにキャラクターを構築する
✔ 第二段階：知名度を利用し、より本質的な活動へと移行する
✔ 市場のトレンドに応じてブランドを変化させる

「飽きられる」ことを前提とした戦略であることが大きな特徴 であり、
特にエンターテイメントの世界では、「キャラクターの新陳代謝」が求められます。

しかし、この手法をそのままビジネスパーソンのブランディングに適用すると、決定的な問題が生じます。

ビジネスパーソンに求められるブランディング：「信頼の蓄積」

一方、ビジネスパーソンや専門職におけるパーソナルブランディングは、演出よりも「信頼の構築」が最優先されます。
芸能人のように「短期間で目立つ」ことよりも、
「継続的に選ばれ続けること」がブランディングの本質 となります。

ビジネスパーソンのパーソナルブランディングの3要素

✅ 「何者なのか」を明確にする
→ 自分の専門性・提供価値を明確にする（キャラクターを演出するのではなく、本質を磨く）

✅ 一貫性を持ち、信頼を積み上げる
→ ブランドの強さは、「どれだけの期間、一貫して価値を提供できるか」で決まります。

✅ 飽きられるのではなく、深化するブランドを作る
→ 長く選ばれるブランドは、流行に流されることなく、より深い価値を提供できるものです。

つまり、「パーソナルブランディングとは、自分自身の在り方を明確にし、選ばれる仕組みを作ること」 であり、決して一時的な話題性のための「キャラクター戦略」ではありません。

「目立つこと」ではなく「選ばれること」が本質

ここで重要なのは、「目立つことがブランディングではない」 という点です。
短期的な認知獲得のために派手な演出をすることは、むしろ逆効果になる場合があります。

特に、高い知的レベルのクライアントや、長期的な関係構築が求められるビジネスでは、瞬間的なインパクトよりも、継続的な信頼の方が圧倒的に重要 です。

✔ ビジネスパーソンにとってのブランディングとは、「何を言うか」ではなく、「誰が言うか」で決まる。
✔ 本質を磨くことで、「この人なら信頼できる」と思われることが、最強のブランディングとなります。

結論：ブランディングは「育てるもの」である

「ブランディング」は、短期間で作るものではなく、長期的に育てるものです。芸能人のブランディングが「キャラクターの創造と再構築」であるのに対し、ビジネスにおけるパーソナルブランディングは 「信頼の積み重ねと深化」 です。

どちらの方法が優れているという話ではなく、「何を目指すか」によって、適切なブランディング戦略は異なります。ビジネスパーソンが「目立つこと」に囚われたとき、本来の価値を見失います。
むしろ、「選ばれ続ける存在」になることこそが、真のパーソナルブランディング です。

ブランドコンサルティング、イメージコンサルティング東京
株式会社グラースジャポン
www.grace-japon.com